◆2015.11.1

★懐かしのラーメン

 灯台もと暗し、とはよく言ったもの。昔ながらのラーメンをたまには食べたいと思っていたが、自分が住む街にそれはあった。先日、地元南林間駅周辺の写真を撮っていたとき、この店に入る勇気はない、また、大したことはないだろうと敬遠したが、ネットで念のため調べるとそこそこの評価がされていた。「柳華」というラーメンを主体とした中華料理店だ。ネットに頼って地元の店に入るというのも我ながら情けないが、外食はもっと離れたところでするものと思っていたから、この店はまったく眼中になかったのだ。ほとんどの場合、昼食は自宅で妻か私が作るか、買ってくるかして済ますのだが、たまには別行動しようということで、今日、私は「柳華」を選択したのだった。店の中は古びてはいるが、掃除が行き届き、不潔感はまったくない。表から見た印象よりはるかによい。4人掛けテーブル席が3つ、カウンターが3席と思ったより広く感じる。厨房が変形の三角形だがここも狭さを感じない。70歳代と思われるおやじさんがひとりで切り盛りしている。先客がひとり、角刈りで口ひげのお兄さんがビールと餃子を食していた。私は壁側の奥の席に着いた。壁にメニューの短冊がたくさん貼ってあるが、やたら安い。ラーメンは450円、大盛でも550円だ。消費税アップのときに、多分メニューの価格部分を貼り替えたのだろう。それでもこの値だ。ラーメンと半チャーハン(300円)を注文。店の隅の上部に三角形の棚を吊り、小さなテレビが据えつけられ、大学駅伝の放送が流れていた。どこかの商店の名の入ったカレンダーがいくつか掛かっている。確実に40年前にタイムスリップしたようだ。ほどなく、お盆に載せられ、注文の品が運ばれてきた。懐かしのしょう油ラーメンだ。チャーシュー2枚とシナチクたっぷりと刻みネギ、それだけだ。縮れた手打ち麺はちょっと具に隠れている。一方、チャーハンはラーメンのチャーシューと同じものものを刻んで使い、たまねぎ、にんじん、コーン、グリーンピースが確認できた。トッピングに紅しょうがが面白い。さて、味は・・・私は料理の味を分析し、表現する能力を持たない。昔とそっくり同じものではないが、充分に懐かしさが込み上げてきたのは間違いない。最近、食が細くなってきたため、半チャーハンがかなりきつく感じたが、それでもおいしくいただけた。暖簾をくぐり、引き戸を開けた先には確かにあの時代があった。また、行くことになることも確かだ。(PowerShot S100)

煤けた壁と色褪せた暖簾のこの店に初めて入るには、やはり、躊躇する

この価格は現在のものだ

何も特殊なものはない
禁煙ばかりのラーメン専門店全盛の時代にあって、
ゆがんだアルミの灰皿が今どき、粋にさえ感じる

厨房で黙々と私の注文の品を調理している
若いころの写真だろうか、
手打ちであることを誇りにして作っているのだろう
角刈りのお兄さんがトイレで席を立った

なぜか扇風機の羽が取り外されている
季節が過ぎたから邪魔な部分を仕舞ったのだろうか

入口のガラス戸が中華の店だと主張しているようだ

来た、半チャーハン300円とラーメン450円
 
スープひと口で40年前に戻り、
麺を口に入れて街の情景がよみがえる

ラーメンに 時が跨いで 初冬かな

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