2021年10月08日

遅咲き

 夕べの首都圏の最大震度5強の地震には驚いた。首都圏の震度5強は2011年東日本大震災以来の震度とのこと。このところ各地で小規模な地震が多発しているので、何だか不気味だ。最近は午後10時を過ぎると眠くてたまらず、すでに寝ていたので今回の地震に叩き起こされ、ベッドの下に置いてあるヘルメットを慌てて装着した。10年前ほどではないが、帰宅難民も発生し、東京は大混乱のようだった。水道管の破裂などインフラが老朽化している首都圏は、その更新が急がれる。我が家では特に被害はなかったが、マンションのエレベーターがこの地震で停止したようで、業者の対応が遅れて、本日の昼まで復旧しなかった。
 先月29日の自民党総裁選で勝利した岸田文雄さんが今月4日の首班指名で第100代内閣総理大臣となり、日本のかじ取りをすることになった。今日は、総理大臣就任後初の所信表明演説を行った。一番の注目は、「新しい資本主義」というものをどう説明するかだった。「成長戦略」と「分配戦略」が車の両輪だとのこと。成長戦略では、1.科学技術立国の実現、2.「デジタル田園都市国家構想」、3.経済安全保障、4.人生100年時代の不安解消、セーフティーネットの確保、とのこと。分配戦略では、1.働く人への分配機能の強化、2.中間層の拡大・少子化対策、3.看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やす、4.公的分配を担う、財政の単年度主義の弊害是正だそうだ。岸田さんは、これまでの市場優先主義によって格差が拡大したとされる「新自由主義経済」を廃し、成長と分配の好循環を目指すのが「新しい資本主義」とのことだ。
 しかし、よく考えれば普通のことを言っており、これまでやろうとしても実現できなかったことを整理しただけの内容だ。つまり、「新しい」ものはない。中国や韓国など新興国の目覚ましい経済成長に追いついていく具体的な方策と活力が今の日本に残っているとはとても思えない。今年のノーベル物理学賞を受賞した米国籍を取得しているプリンストン大の真鍋淑郎さん(90歳)は「アメリカでは自分のしたいようにできます。(中略)日本に帰りたくない一つの理由です。なぜなら、私は他の人と調和的に生活することができないから」と言い放った。一度日本に戻ったが、結局アメリカを選んだ真鍋さんは日本に失望しているのだ。30年、50年単位で続ける基礎研究に莫大な政府資金を投資する発想は、安倍首相の時代に終わらせてしまい、目先の応用技術ばかりに傾注し、かつての活力ある日本は存在しない。それを岸田さんは10兆円ばかりの大学ファンドでお茶を濁そうとしている。とても「科学技術立国」などあり得ない。しかし、問題点を再確認した点は評価できる。前に進めてもらうしかないのだ。
 妻の実家の庭にすでに終わったはずの彼岸花が一輪咲いていた。金木犀も二度目の開花によって甘い香りが漂っている。9月の天候不順がもたらした結果であろう。自然の生命たちは、健気に、そして、柔軟でしたたかにその命を長らえている。日本ではコロナの感染確認者数が減り続けているが、安心せずに日本人もしたたかに生き延びていきたいものだ。(PowerShot G7X2)

   一輪だけ庭の石のすき間から伸びてきた彼岸花

自宅マンションのエレベーターが夕べの地震で停止したままだ

今日の空はまだ夏の名残も感じさせた青空だった

遅咲きの たくましき花 そこにあり