2022年03月02日

悲しい雛祭り

 明日は3月3日、桃の節句・雛祭りである。その日が近づくと、妻は忙しくなる。晴れた2月末に人形を取り出し、陰干ししたあとに飾り付ける。小さな雛人形は、祖父が飾りつけが簡単にできるからとコンパクトなものを選んだという。ちらし寿司用の食材を調達し、桃の花なども用意する。これまで60数回、かかさず繰り返してきた年中行事だ。私も手伝い、図面や写真を見ながら、内裏雛はじめ、三人官女、五人囃子などをいつものとおりに並べていく。あたたかい春が近づき、ほっとできる季節の行事があるのはうれしいものだ。
 しかし、今年の雛祭りは「うれしいひなまつり」ではなく、「かなしいひなまつり」となってしまった。海外では雛祭りに相当する行事があるかどうか知らぬが、幼い女の子の成長を祝う行事が世界にも平和で安穏とした中であってほしい。今、ウクライナでは悲惨な戦時下に無理矢理に置かれてしまい、母と子らは命がけで海外への脱出を試みている。母国に残った男たちは戦い、年老いた両親はじっと平和を願い、身を潜める。一週間前まで全くの平和な国がミサイルや砲弾、銃弾が飛び交う戦場と化してしまったのだ。ロシアによる一方的な理屈によって平和を奪われたウクライナ国民の怒りと悲しみはいかばかりか、日本に暮らす私たちには想像も絶する現実であろう。
 この状況は、ロシアのウラジーミル・プーチンというロシア帝国の復活を夢見るひとりの独裁者による暴挙によって、もたらされた悲劇でしかない。そのたったひとりの狂気が、ロシア、ウクライナそれぞれの多くの人々の尊い命を何とも安易に奪っていることか。こんなことが現実にあっていいわけがない。ウクライナから届けられるさまざまな悲惨な映像が心を痛めつける。日本や欧米の民主主義国家とされる国々はこの暴挙をただただ威嚇や遺憾のメッセージを発するのみで、ウクライナで今現在命を落とす人々を救う行動には直結していない。ウクライナを救いたいが、どの国も国連も直接的に交渉も軍事行動を起せない不甲斐なさを腹立たしく思う。さまざまな利害が交錯し、火の粉が自らの頭上に降りかかるまでは何もできないのか。こんな理不尽な世界を無辜の民が受け入れることができるわけがない。このうえは善良なロシア国民がプーチンを抑えるしかなくなっている。どんなかたちでも悲劇的な結末にはなるが、ひとりの独裁者をこの世から葬り去ることが今は最善の策としかいいようがない。(SONY a7R3)


小さな雛人形たちは今年も顔を揃えた


少しずつお供え物を並べる


雛人形を描いた掛け軸も毎年掲げる


ちらし寿司も朝から支度する

ひなまつり 戦乱の国 子に幸を