◆2001.9.15

★暗澹たる道のり
 
 やはり、このでじかめ・ダイアリーでも避けて通ることができない話題である。今の私には、まだ、初秋の季節感を写真に表現する余裕がないままでいる。
 9月11日のアメリカでの出来事は、あまりにも衝撃的な事件であり、さまざまな角度から捉えられた航空機によるツインタワーへの激突映像などは、映画やCGではない現実だということを納得するのに時間が必要だった。その数もいまだはっきりしない何の罪もない多くの人々の尊い命が奪われた。自爆し、他人の命を巻き添えにしてまでしなければならない使命など存在してはならない。そこまでする「憎しみ」とは一体なんだろう。「憎しみ」をぶつけた相手方は、何十倍ものさらなる巨大な「憎しみ」を生み出してしまった、アメリカという国・・・。
 私は神奈川県大和市に在住している。アメリカ軍と自衛隊が駐屯する厚木基地のある街である。この基地は、太平洋戦争終結直後マッカーサーが降り立ったところとして知られ、現在は、横須賀基地とともに米第七艦隊の後方支援基地として軍事的に重要なものとされている。滑走路を航空母艦と見立てての夜間訓練「NLP」が基地周辺の住民に墜落の恐怖と騒音を撒き散らしている。今日は、土曜日で普通なら訓練のない日のはずが、朝からジェット戦闘機(写真はF−14と思われる)やレーダー機、ヘリコプターが離発着訓練を繰り返している。基地騒音に慣れた私たち市民にとっても異様な光景である。まさに、戦争に突入していくのを肌で感じ取れるところに私たちは暮らしている。
 アメリカの下院は、今日、上院に続き、武力行使を容認する決議を採択し、400億ドル(4兆8千億円)もの「報復」のための予算を通してしまった。この金額は、尋常ではない。東南アジアの国家予算を調べると、タイ250億ドル、マレーシア220億ドル、フィリピン166億ドル、シンガポール136億ドル、カンボジアやラオスに至っては5億ドルに満たない額である。まして、攻撃の的にしようとしているアフガニスタンは、内戦状態であって、多くの難民も発生しており、国家の体をなしていず、疲弊しきっている。アメリカは、そんな国を相手に戦争しようというのか?400億ドルすべてをミサイルや爆弾に投入し、破壊し続けたところで、国家は消滅するかもしれないが、人々を根絶やしにすることはできない。アメリカが抱いた巨大な「憎しみ」のまたさらに何十倍もの「憎しみ」がテロリストたちに受け継がれていき、永遠にアメリカを攻撃し続けることになろう。
 私の友人のHPから引用させてもらった言葉を改めて紹介しておこう。

 「憎しみは憎しみによってやまず、愛によってのみやむ」

 
第二次世界大戦中、日本軍はセイロン(現スリランカ)のコロンボ市とイギリス海軍の基地があったトリンコマリを空爆したが、1951年のサンフランシスコ講和会議で、当時の大蔵大臣(後の初代大統領)J・R・ジャヤワルデネ氏はブッダの言葉「憎しみは憎しみによってやまず、愛によってのみやむ」を引用し、対日賠償請求権を放棄、日本分割統治案に反対し、同案が撤回されたことはその後の日本との友好関係ならびに日本が繁栄につながった一因とも考えられている。
 私は、政治的に右も左もなく、また、何かの宗教に属しているわけでもない単なる小心な一市民にすぎない。でも、小心だからこそ、今の状況を恐れる。アメリカは、今回の事件で傷ついた体と心、そして誇りについて、もう一度よく振り返ってほしい。深呼吸を何度もして、こみあげる怒り、憎しみの気持ちを冷静な目で見つめ直してほしい。愛する家族たちを奪われた心情は、察するに余りあるものだが、さまざま状況下において「愛」という許容する思想がなければ、全世界は破滅に向かっていく。どんな宗教の原点にも「愛」があったはずであり、後に政治的に利用されるに至り、排他的になっていくが、この原点に立ち返ったそれぞれの開祖の考えを改めて紐解くべきであろう。血を流し続けてきた結果得たのが各宗教の開祖たちの出発であったはずである。もう憎しみによって、血と涙を流すまい。愛によって、すべてを洗い流すときが来ている。それを実行する勇気を私は信じたい。


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