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梅干し作りは、手順さえきちんと守れば、失敗せずに誰にでもできるお手軽な漬物だ。塩をふって、重しをかけ、最後は三日三晩干すだけだ。失敗のしようがない極めて単純なレシピだ。こんな単純なシロモノだからこそ、少しの差が出来栄えを微妙に、そして、大いに左右する。
先ずは、梅の選定である。漬けるときの状態では、生梅が固いものは避けたい。仕上がりのときに皮が固くなり、すんなりと歯が立たないのはいただけない。生梅が売り物として店頭に並んでいるのは、まだ、青みが残っているので、買ってすぐに漬けることはしない。1日ぐらいは段ボール箱に開けて、全体が黄色が主体または赤味が多くなるまで様子をみたい。中には傷んで茶色になっているものが数個含まれているぐらいがいい。
次は、漬け込むときの塩加減だ。元来の梅干しは、生梅10に対して、塩2である。かなり塩辛い梅干しになるが、これが本来の梅干しである。今時スーパーの店頭に並ぶ梅干しは、必ず漬けた後に塩抜きされ、かつお節やハチミツで味付けされていることがほとんどの「塩分控えめ」「健康志向」の商品で、元来の梅干しとは似て非なる亜流品である。梅干しがなぜ古くから作り続けられているかと言えば、保存性と殺菌効果である。現代においては、冷蔵保存や人工保存料など過去には使われなかった方法によりあらゆる食品が長期保存が可能になっているが、それによって健康が保障されたかどうかは別次元の話になる。塩分の多い梅干しも高血圧などのリスクは当然にあるが、男性で1日10グラム(女性8グラム)以下を守れば梅干しは良薬の範疇になるかもしれない。ただし、自己責任で。
次に漬け込む期間だが、これは最終的に干すべきときの頃合いによる。途中で赤ジソを漬け込み、上下入れ替えなどして1ケ月は漬け込みたい。赤ジソの色をまんべんなく染み込ませる時間が必要なのだ。
そして、干す段になるが、三日三晩干し続けるのが定番だが、これは屋外(ベランダ可)で日中の太陽光を浴びることでおそらくうま味が増していくものと思われ、夜間の特に明け方に露が梅の周辺に付く現象があるが、これも梅の新陳代謝を増進させ、梅を梅干しに変える作業をしているのだと思う。
上手に出来たと思える年と同じようにコンスタントに毎年梅干し作りを続けるのは困難なことがほとんどだ。皮の硬軟、梅肉の硬軟・水分、塩加減、うま味の具合など、20年以上作り続けても一様に出来た試しがない。また、反省して、次の梅干しをより良いものにしたいと思うこの梅雨時ではある。(EOS
5D3) |
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