2015年03月15日

杉浦日向子のこと

 ようやく私の足の調子もどうにか8割方よくなってきたものの、義母がまた入院することになり、わさわさしていました。今回は左大腿骨頸部骨折ということで、私と同じ人工股関節にするか、ネジ止めにするかどうかという判断に迫られました。生来落ち着きのない義母には認知症となった現在では、きちんとした術後の自己管理ができないはずです。人工股関節では、外れる恐れのある禁止されている動きがいくつもあります。義母には無理な注文です。入院後しばらく様子を診て、ネジ止めでいいだろうということになりました。これだと体への負担も少なく、退院も早くなります。11日に手術は行われましたが、術後の調子はよく、この前の脳の異常もありません。
 相変わらず家族の顔を見ると「トイレに行かせて!」と大騒ぎしますが、他はいたって元気そのもの。予定の術後2週間の入院も早まるかもしれません。恐るべき生命力です(笑)。何はともあれ、ひと安心。
 今日の見舞いは娘である妻に任せ、私は隣りの駅まで歩いてみることにしました。わずか1キロ半の道のりでしたが、このところまともに歩いていないので不安もありました。そんなに寒くもなくなってきた気候の中で何とか目的地に着くことができ、小さな達成感。系列の喫茶店に入りコーヒーとおやつ代わりのサンドイッチでひと休み。(PowerShot S100)

 持ってきた読みかけの杉浦日向子の代表作「百日紅」の続きを読み始めた。ブックオフや最寄の書店では見つからなかったので、Amazonで取り寄せた。他の杉浦日向子の江戸の案内に関する本や漫画、諸々の本はほとんど読んでいる。江戸でそのときどきを暮らす普通の人々を丹念に時代考証家としての確かな目を持って書かれた書物はとにかく楽しい。
 この「百日紅」は奇才、葛飾北斎の娘、お栄(葛飾応為)とその周りの人々を弱冠28歳のときに描いた漫画だが、その時代の空気感が実に生き生きと伝わってきて、「江戸ものファン」としては外せない最高の逸品のひとつなのだ。杉浦日向子の江戸は特に文化文政の江戸文化の爛熟期で、私の好みと合致している。
 しかし、テレビ番組「お江戸でござる」以後は興味もなかったが、彼女は私より4歳下なのに、46歳で亡くなっていたことを知り、暇になった退職後いろいろと江戸ものを調べるうちに、改めて杉浦日向子と出会うことになる。彼女の本に「うつくしく、やさしく、おろかなり」というのがあるが、このタイトルは、江戸の人々への愛情が凝縮された言葉だと感じている。
 杉浦日向子という稀有な才能を持ち、現代東京に生きた絵師は、お栄にも重なって見えたりもする。この5月には「百日紅」がアニメ映画化されるのでそれも楽しみのひとつだ。あのクリクリっとした目を輝かせて、「そこはちょっと違います。」とぴしゃっと映画評を言うような気がする。この7月で亡くなって10年が経とうとしている。合掌。

外でコーヒーを飲みながら好きな本でも読む
至福の時間だ

江戸の世を 肌に感じて 絵師日向子