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ご近所の庭にアジサイが咲く季節になった。まだ、足元が覚束ない妻の手を取って、ゆっくりゆっくりと歩を進め、近所の花々を愛でながら散歩する。実は妻が1週間ほど入院していた。原因は不明だが、極度の耳鼻科系のめまいで体を起こすことも寝返りもできず、嘔吐するばかりで点滴でしばらく過ごした。退院しても本調子に戻ったわけではなく、家事は私がすべてやっているため、写真やホームページどころではなかった。
1週間も入院していると筋力は落ち、歩くことさえままならない。まして、平衡感覚も本調子ではないため、妻がひとりで歩くには危険が大きすぎる。まずは、自宅マンションの廊下を往復することから始まり、自宅周辺を1区画分から2区画分、と時間をかけてゆっくりと散歩するリハビリを私が付き添いし、開始した。
どうやら三半規管に耳石が入って、平衡感覚に異常をきたすらしいが、その症状は人によって様々のようだ。妻はかなりの重症のようで、換気扇や水はねの音が耳に大きく響いたり、やや歩けるようにはなったが、足が地に着かないふわふわした状態が続く。それは、新雪の上を踏ん張って歩かねばならない感覚で足裏に力が入り、すぐに疲れてしまう。徐々に距離を延ばし、速度もやや早くなりつつあるが、まだまだだというのが現状だ。それでも、回復しつつあることがわかるので安心している。
中高年の多くは、何らかの病気や体に不具合があるもので、それらとうまく付き合いながら、日々をやり過ごしていくしかない。よく言われることだが、何の変わり映えのしない、平々凡々の暮らしぶりが最高の幸福なのだ、とつくづく感じる。私自身の持病もあり、ボロボロの体なので、このところの「老々介護」ですっかり消耗してしまった。
しかし、少し歩いては、歩みを止め、「この花の名前なんだったっけ?」とのんびりした夫婦の時間を得ることができたのが、一番の収穫だったのかもしれない。雲行きは、早くも梅雨の空となっていく5月も終わりとなる今日このごろである。(PowerShot
G7X2) |
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