2019年03月20日

町田市立国際版画美術館

 隣接市のひとつ、東京都町田市にある市立国際版画美術館に久々に行ってみた。ここは小田急の町田駅から徒歩20分ほどで行けるが、谷の底のような場所は坂が急だ。芹ケ谷公園と隣接しており、住宅地の中に樹々に囲まれて佇んでいる。現在、日本の代表的な銅版画家のひとりで大正から昭和にかけパリで活躍した「長谷川潔展」が開催されている。私は学生時代の初め、独学で銅版画に取り組んで、すぐに挫折したが、長谷川潔はそのときに好きだった銅版画家のひとりだ。浜口陽三と並んでメゾチントという銅版画技法の最高峰だ。銅板に細かな連続する溝や点を無数に穿ちベースを作るが、そのまま黒インクで仕上げると、真っ黒な画面になる。その無数の溝や点の面を特殊な道具で削ったり磨いたりして、インクを詰めた後、余分なインクをふき取り刷れば、微妙なグラデーションを伴う独特の絵が仕上がるのだ。
 この美術館の豊富な所蔵作品を時系列的にじっくりと鑑賞できたのは、とても幸せであった。壁に掛かった作品との間には柵がないため、目を近づけて細部を観察できる。また、作品によっては、撮影もできるため、持ってきたコンデジで収めた。常設展では、百人一首に関連する江戸浮世絵版画も展示しており、高品質の北斎や国芳、広重の現物を間近に見られたのがうれしく、久々に版画を堪能することができた。ちょうど昼どきとなり、館内にある喫茶コーナーで屋外の景色を眺めながらカレーライスをいただき、芹ケ谷公園をのんびりと散歩しながら帰路に就いたのだった。(PowerShot G7X2)

今日はいいお天気だ
町田市立国際版画美術館は木立に囲まれている

町田駅から歩いて急な坂を下り、膝がガクガクになったころ入口になる

日差しは暖かいが、空気はまだひんやりしている<

版画専門の美術館は珍しい
かつて私は、銀座の画廊を多数巡って版画鑑賞していた

2階の展示室に上がるゆるい階段と空間がいい

これは、ビュランという道具で直接、線を彫るエングレーヴィングという技法で描いている
間近で見れば、線が実に細く繊細だ

長谷川潔の真骨頂のメゾチント
マニエル・ノワール(黒の技法)とも言われ、この静謐な黒の世界がいい

東京のど真ん中のド派手な宣伝をする美術館・博物館と違い、混んでいない
静かに、好きなだけ、作品の前にいられる

歌川国芳の浮世絵版画だ
色がよく残っている
この常設展はすべて撮影可(フラッシュは不可)なのがうれしい

館内にある「喫茶けやき」
ここでは障がいのある若者たちが接客をしてくれる

芹ケ谷公園はまだ冬木立のままのようだ

夏場には回転し、水があふれるモニュメントになるはずだ

ここのソメイヨシノのつぼみはまだ固い

よくわからないオブジェがあった

ツバキがかなり咲き出している

ハナニラも陽に向かって咲き誇っている

突き当たると、小田急線沿いとなる
付近の坂を登り、町田駅に向かうことにした

メゾチント 優美な黒で 堪能す