2022年05月20日

街の名医

 ちょっとした街には内科系を中心に開業医が点在していて、住民の健康を守る一役を担っている。私が住む近くにもいくつか開業医、街のお医者さんがいて古くからお世話になっていたりする。現在、定期的に通っているお医者さんでは、夫婦とも医師で夫が内科、外科を妻が眼科を担当しているところがある。私は眼科にかかり軽度の緑内障の治療のお世話になっている。2ヶ月に一度眼圧などをチェックして、点眼薬をもらい、年に一度は別の医院で視野検査などより高度な検査をしてもらう連携をしている。
 今日はその2ヶ月に一度の受診であった。呼ばれて診察室に入ると、開口一番「年内で閉院しますから」と言われた。私よりひと回りは先輩と思われる小柄の女医先生は、いつも矍鑠として的確な判断と丁寧な説明をしてくださる。私の緑内障の発見もメガネを作り直すために受診したときに、ついでにいろいろ診てもらった中でわかったのだった。早期発見と治療によって軽度のままで日常生活を支障なく過ごせている。私の義兄の白内障や糖尿病の発見でもお世話になった。妻もものもらいなどでお世話になる。患者さんが少ないときは家族のことも含めいろいろ気にかけて話をしてくれる。私たち家族には欠かせない「街の名医」なのだ。感謝の気持ちは言い尽くせない。
 詳しいことは聞きもしないが、高齢により後を継ぐ者もいないため、きっぱりと見切りをつけて、患者さんへは今後の別の医院などへの紹介を事前に準備しているのだろう。私は年に一度通院する大きな眼科医院に移ることになる。町医者に定年はないが、どこかで自己判断をし、決着をつけねばならない日が来るものだ。
 街にある小さなお医者さんがいつの間にか閉まっているのを何度も見かけてきた。身近で慣れ親しんできた街のお医者さんも含め、豆腐、肉、魚、米、パン屋など食材の店や洋品店、雑貨店もどんどん消えている。街がさびれていくのをずっと見続けるしかないのか、淋しい限りである。(SH-M15)


医院の待合室にはいつも季節の洋花が見事に飾られている

町医者の 心名残りて 去る日来る