2022年08月14日

八月のもみじ

 2年前の夏に8年間冷凍保存したモミジの葉を解凍したことがあった。そしてモミジたちは、本に挟んで押し葉にしてあった。すっかりそのことも忘れかけていたら、写真のネタもなくなってきたので、手近に撮れるものはないかと思案していたら、このモミジの押し葉を思い出した次第だ。
 拾ってきてかれこれ10年近くになる葉っぱを保存し、こうして写真に撮っている、というのも何だか妙な縁だ。10年という歳月の間にはいろいろあり、夫婦それぞれの母親が亡くなり、自分より年下の友人も2人亡くなった。新たな出会いより必然的な別れが多くなる年代になってしまい、それにこだわると悲しすぎる。せいぜい一年に一度この盂蘭盆会の時期にそんな思いを凝縮させて、他の日は楽しい思い出だけを浮かべればいいだろう。
 すっかり水分も抜けたモミジは色も褪せている。水に戻すとどうなるかは試さないが、撮影のときは色が少しでも出ればいいと写真のフィルムを見るための小型のライトテーブルに載せて透かして撮ってみた。なかなか思うようには発色しないが、これはこれでいい。
 八月のもみじは10年の歳月と記憶がこの葉っぱに結晶したような、そんな思いで眺めていた。そして、明日は終戦の日、父や母たちが戦争の惨禍から生き延びて、新たに命をもらった日だ。改めて、今の私たちを残してくれた多くの人々の散った命に手を合わせたい。(SONY a7R3)


ライトテーブルに載せたモミジの葉


赤や黄色の名残はある


普通の紙の上に載せて撮った
こちらの方が自然ではある


別の葉っぱ、ライトテーブル


同じもので、紙の上


台風が過ぎた朝
やや朝焼けになるも雲が多かった

夏もみじ 本の間に 隠れおり
歳月や 人ももみじも 変えにけり