2022年12月26日

浮世絵再発見

 撮影に出かけられない日々が続いている。自宅周辺をちょっと散歩する程度だ。寒さも体に染みる。日本海側の豪雪とそれによる停電などの被害に比べれば、天国のようなこちらの状況かもしれないが、調子の悪い体には堪えるものだ。
 先日、妻の実家からまた浮世絵が見つかったと義兄から渡され、保管することにした。義兄ができる範囲の親の持ち物を整理する中で出てきたものだ。ほぼ整理し尽くしたため、「掘り出し物」はこれが最後であろう。持ち帰ってよく調べると、以前に見つかったものと同じ浮世絵師「守川周重」による明治14年の作品だ。今回は巻物状態というか、横長の現代の洋紙に貼ったものだ。この浮世絵は江戸時代にはよくあった1セット3枚シリーズものだ。ぴったり重なるように左右の部分を切り取って、貼り合わせてしまっているから価値は低いだろう。眺めるにはちょうどいいのだろうし、江戸時代にも同じようなことをした。全体で絵の部分が横72cm、縦37cmとなり、大きな一枚絵になる。
 内容を調べると歌舞伎の演目で陰陽師安倍晴明の出生の秘話を描く「芦屋道満大内鑑」の登場人物が描かれているようだ。明治14年という年は、西南戦争が終わった後、維新政府では伊藤博文と大隈重信が対立し、伊藤が大隈を追放する「明治14年の政変」が起きている。しかし、庶民としては江戸の暮らしをそのまま引き継いでいるようで、歌舞伎は相変わらず人気があり、浮世絵も売れたのだ。
 明治の激動の世の中とコロナなど自然災害や終わらない戦争で翻弄される現代の世の中、本質的に人間社会というのは技術的な進歩はあっても、人間そのものの愚かしさは変わらず何も進歩がない。何度でも同じ過ちを繰り返し、そして、衰退していくしかない宿命の生物なのだと今年も思わざるを得なかった。(SONY a7R3)


「芦屋道満大内鑑」の一場面なのだろう


くずの葉姫を演じる嵐璃寛(4代目)
葛の葉姫は狐の化身
画面を大きくしてありますが、クリックすると全体像が見られます(以下同様)


阿部(安倍)保名を演じる助高屋高助(4代目)
葛の葉姫の夫で安倍晴明の父親


奴よかん平(与勘平)を演じる中村時蔵(初代)
保名の従者

冬寒の 朝外に出で すぐ戻り
浮世絵に 思い巡らし 令和の世
いつの世も 人間ばかり 愚かなり