2023年07月12日

山百合哀し

 このところ連日の猛暑である。気象庁で公表される気温の数字は、芝生の上1.5メートルの風通しのよい筒状の観測器の中で測ることとされている。だから現実の体感温度とはかなり隔たりがあるのは当たり前だ。私の住む地域では、今日あたりは40度近くになったのではないか。人がまともに活動できる状況ではない。
 そんな中、午後になって毎年楽しみにしているヤマユリを見に行った。午前中は所用があって行けず、まだ暑さ真っ盛りの午後2時過ぎ、氷や水を用意し、コミバスを使って極力歩かずに往復したのだった。ヤマユリの咲く公園は土日祝の他、水曜日しか開放されていない。今日の水曜日を逃すともう間に合いそうになかった。
 そして、公園に到着するとヤマユリは咲いていた。しかし、例年に比べ花をつけている株が少ない。見ごろをやや過ぎたとはいえ、花たちはもうかなり傷んでいた。連日の猛暑ですっかり萎えてしまったようだ。地元の愛好会の方たちが丁寧に育てているのだが、この暑さにはかなわなかったようだ。何とも哀しい限りだ。
 子どものころの家の庭には、植物好きの父が育てていたヤマユリやオニユリが夏に咲いていた。小さな庭に咲く素朴でいて可憐な季節の花たちが、貧しい生活の中に潤いを与えていたのだと思う。あの子どものころの夏も暑かったが、もっとカラっとしていたように思う。草いきれのする庭の中で身をかがめ、ヤマユリにそっと鼻を近づけ嗅いだ香りに、なぜかドキッとする大人の世界を垣間見たような気がした。そんな記憶がヤマユリと夏の暑さがセットになって甦ってくるのだった。(
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このヤマユリは何とか見られる


全体的に花びらが萎れかかっている


もう少し早く来られればよかった


モンキアゲハがやってきていた


まだアジサイが青々とこの一輪のみが咲いていた


松ぼっくりが落ちるころだ


小さな森だが、ほっとする

しなだれし 山百合哀し 暑き午後
山百合に 遠き思い出 よみがえり