2026年03月11日

あの日

 今日は「あの日」である。普通には東日本大震災を思い浮かべる。あの日から15年が経過した。この年齢になると15年前のことなどついこの間の出来事でしかない。多くの人々が津波に流され、一方で原発事故で故郷を離れるしかなかった人々も多くいる。
 原発の廃炉は遅々として進まず、途方もない時間と経費を要することになる。少しでも安全性に問題があれば重大事故になる原発だ。そんなものを地震津波大国の日本に作ってしまった日本政府の罪の重さは計り知れない。そしてそれをまだ使おうとしている。あのときの「原発はもういらない」という日本国民の思いはどこへ行ってしまったのか。
 今日はまた別の個人的な「あの日」でもある。父が亡くなって28年が経った。心臓を患って入退院を繰り返していた父は、他の病気も併発し、医師の判断で退院し、自宅で療養中に最後の発作を起こし亡くなった。77歳であった。自分も70歳代になり、そう遠くはない出来事になるのだろうか。
 父は農家の三男坊で口減らしのため、軍属となり18歳で日中戦争真っ只中の中国に赴任する。その後20歳で徴兵され、やはり中国で衛生兵として任務に就き何とか無事に終戦を迎え、昭和21年に帰国する。高等小学校のみの学歴しかない父は戦後、いくつかの臨時の仕事や農業を経て、神奈川県の雇(やとい)という身分で仕事にありついた。そんな貧しい中で母と結婚し、混乱期の戦後日本で兄や私を生み育て大学まで出させてくれた。感謝しかない。
 3.11はそんなふたつのことを思い出す祈念の日なのだ。(SONY a7RM3)

 3.11から話が逸れるが、WBCの試合がテレビで見られないことを調べてみた。熱烈な野球ファンではないが、3年前左膝の手術で入院中に、ベッドサイドのテレビでのWBC観戦が唯一の楽しみでもあった。今回はそれが見られない。なぜか?
 キーワードは「OTT」と「ユニバーサルアクセス権」にありそうだ。今回のWBCの全47試合の日本における放映権はネットフリックスにあるという。150億円とも言われる放映権料は、3年前の日本のテレビ局数社が獲得した放映権料の5倍だそうだ。
 ネットフリックスは日本でも利用者が急増中のアメリカのOTT(Over The Top既存インフラの制限を超える)、すなわちインターネット経由で動画、音声、メッセージ等のコンテンツを直接提供、配信するサービスを行う事業者のことだ。WBCを実質運営するのはアメリカ大リーグMLBであり、WBCがよりカネになると判断したMLBとネットフリックスが手を組んだ。寝耳に水の日本のテレビ局は一致団結しても高額の放映権料を払うこともできない。ちなみに日本テレビNTVがネットフリックスと契約して、日本でのテレビカメラ撮影や実況中継を提供しているとのことだ。つまり下請けになり下がったわけだ。
 今やプロスポーツなどをライブで見るには、お金を払うのが常識になりつつある。それがOTTであり、サブスクで月額利用料を払って、スマホやネットにつないだテレビ(モニター)で見る。日本はこうしたOTTにすっかり出遅れしてしまったのだ。かろうじてU-NEXTが日本では奮闘しているが、ネットフリックスやプライムビデオに及ばず、世界シェアはない。
 日本は、大谷翔平や山本由伸を生み大リーグやWBCで大活躍だが、日本のテレビは日本でプレーしている彼らの姿をリアルタイムで見ることができなかった。野球ばかりではない。日本はマンガやアニメ、映画でもすぐれたヒット作を生み出しているが、それを世界の人々に見せて儲けているのは、日本ではない外国の企業なのだ。「コンテンツはあるが、それを売るプラットホームがない」のが日本の旧態依然とした企業風土と政府の無策が原因しているのだろう。インターネットをはじめとするIT、AI関連産業分野で日本がトップを取れないのは当然のことのようだ。
 しかし、お隣りの韓国はOTTが進みつつあり、韓流コンテンツが世界的ブームになっている中で日本より先を行っている。今回のWBCでは韓国のOTT企業が韓国戦の独占放映権が持っているのだが、韓国の法律で「ユニバーサルアクセス権(普遍的視聴権)」を適用させ、国民的関心事の高いスポーツコンテンツは地上波にも配信させ、無料で見られるようにしたのだ。日本にはこのユニバーサルアクセス権の法整備がされておらず、奇妙なブツ切りのおこぼれ映像をもらってWBCを地上波で伝えているだけなのだ。
 こうしたお粗末な日本のテレビ局の現在の状況を報道機関でもあるのに、何も伝えていないことが間違っている。大谷翔平の活躍を見ることよりも、なぜ大谷を見られないのか、この日本のテレビ局の実態を詳しく今伝えないのが腹立たしい。これではマスコミではない。自分たちの都合の悪いことはあやふやにしてしまうのは、戦争中の新聞報道と同じ穴のムジナである。戦争や原発ももっと報道されなくなる。そのことが今もっとも気になっている。


父の写真立ての横に花を飾った
他に好きな甘いものも
(この遺影は花と合成したもの)

忘れまい あの日あの時 幾星霜


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