◇それは、不思議な雰囲気を持った建物であった。
すでに、エレベーターは朽ちて動かず、窓枠は錆果て、廃墟と化しているかのようであったが、
人は昨日の続きが今日であるという当たり前の生活をそこで繰り広げていた。
私の友人が6階の部屋のひとつを又借りして学生時代の感傷に浸った生活をしていた。
音楽をやる者、8ミリ映画に没頭する者、写真で喰えないかと考える者が集まり、
酒を飲み、麻雀をし、男と女を語り、そして、去っていった。
この建物がどれだけ価値のあるものかは、研究者に語ってもらえればいい。
ただ、この建物で過ごしたあの蒼い時を忘れることはない
。
1976年10月17日撮影
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