鳩山政権、落日見えた |
2009/12/16(水)
この言葉の散歩道も年末にあたり、今年のシメのキーワードで終わろうとしたが、今の状況を表す、ピタっとくる単語が見当たらないので、今回は文節にしてしまった。
このところの鳩山首相のさまざまな状況を観察していると、この人はもう総理大臣を辞める腹積もりができているのではないか、と思う。所詮は「裕福な家庭に生まれ育った」ことが、鳩山政権を強固なものにできない根本の原因だったことになる。
決定的だと思った出来事は、小沢民主党幹事長が記者会見で、中国の国家副主席の来日に伴う天皇との会見のルールについて、宮内庁長官を「辞表を出してからものを言え」と恫喝したことだ。この記者会見で小沢さんは、「君は、日本国憲法を読んでいるか」「何とかという宮内庁の役人がどうだこうだ言ったそうだけれども」などと記者や宮内庁のことを頭ごなしにバカにした物言いだった。もの凄くいやなものを見てしまった不快感が湧き起こると同時に、これで民主党も凋落への道を辿るのだろう、と確信した。しかも、鳩山さんは、その後、長官の発言について「ひじょうに不快感を覚えます」などと強く言っている。最近、母親からの資金提供問題で声が小さくなっていたが、今日はまるで「虎の威を借る狐」のごとき態度だ。虎とは、小沢幹事長のこと。小沢さんも幹事長として、党の掌握に専念し、表立った政治的な動きは控えていたのだろうけど、最近の鳩山さんや内閣全体の不甲斐なさに業を煮やし、「政治家というのは、こういう風にやるものだ!」と見得を切り、鳩山さんたちに見せたのではないか。誠に痛ましい光景だ。
さて、改めて、民主党政権の何が問題なのかを挙げてみよう。
一番の問題は、野党時代に政権についた際の基本的な国政運営の方針をつくっていなかったことだ。影の内閣は結局何の役にも立たなかった。これは驚愕に値することだ。当初、「国家戦略局」が新設されるとの話に多少興味が湧いたが、結局、何の機能もしていない。菅直人副総理兼国家戦略担当大臣は、仕事をしていない。「国家戦略」と標榜する以上は、当然に野党時代に、何十年も先の日本のあるべき姿を描き、それに基づいた各部署の時系列的な基本政策を具体化したものを持っていなければならなかった。それを、党幹部が常に頭に浮かべることができる最上級の重要項目としての共通認識を持っているはずだった。特に、外交上、問題となる日米同盟や中国との関係など、自民党とどう違うのか、どう同じなのかを明確に説明できるようにしておく必要があった。しかし、民主党はこれらを含め、一切何も考えていなかった!。党幹部の考えはまとまっていなかった。これは、とてつもなく恐ろしい話である。初めて政権ににつくのだから多少の戸惑いはあっても、基本方針、基本政策を持っていない政権などありえないことだ。なので、民主党はいったい何を目指しているのか、未だに国民には理解できないままでいる。選挙時のマニフェストは単なる「選挙対策」であって、国家の具体的方向性を示す政策集ではない。「友愛」という言葉や「コンクリートから人へ」では、何もわからない。だから具体的に何をやりたいのだ、と国民は苛立ってくる。
二番目の問題として、参議院での過半数も確保するために、社民党、国民新党と連立を組んでしまったこと。所詮、基本的な考えの違う社民党、そして、亀井静香のような陋習人間がいるような党とは、徒党は組めないはずだ。また、国民の大多数は、民主党政権を支持したのであり、社民党や国民新党との連立までを支持したわけではない。そういう意味では、「国民目線」からかけ離れた党利党略でしかない。そして、結局は、その両党に振り回され、鳩山さんの声は小さくなる一方だ。最初の国会で「あなたがた(自民党)に言われたくない!」と声高に普天間問題などについて答弁していた雄雄しき姿は、はや、遠い過去の話のようだ。閣外協力の範囲で収めるべきであった。後の祭りということ。
三番目には、やはり、内閣総理大臣としての鳩山さんのリーダーシップの欠如だ。最後に決断するのは私だ、と言いつつ、結局は結論を先送りし、何ひとつ決断していないことだ。このお金持ちのお坊ちゃんには、所詮、荷が重すぎた。
主に以上のことから、普天間問題、事業仕分け、環境税導入、たばこ消費税値上げ、これらに伴う補正予算に来年度予算策定、郵政民営化問題の行方などなど、何ひとつ明確な答えや方向性は出すことができていない。なぜ、そうしたいのか、の説明や根本理念が見えなくては、国民は、地方は、何をどうしたらいいのか、途方にくれてしまう。
しかし、こんな政権を圧倒的に支持したのは、ついこの間までの国民である。国民は、大きな負の遺産を背負うことになってしまった。このことは、日本にとって取り返しのつかない選択をしてしまったことになる。泣くのは常に国民である。 |
|