2018

ノーベル賞
2018/10/02(火)
 昨日からノーベル賞の発表が始まった。最初に医学・生理学賞に輝いたひとりに、日本人がいた。京都大学名誉教授で新しいがんの免疫療法を発見した本庶佑さんだ。研究成果の詳しい内容については、説明を聞いても一般人には漠然としか把握できないが、長い基礎研究が実を結ぶ結果となったことは理解できた。研究への姿勢について質問されると、「不思議だと思う好奇心」「簡単には信じないこと」「自分の目で確信できるまでやる」などを挙げた。また、基礎研究の重要性について、「基礎的な研究から臨床につながる」「生命科学はデザインを組むこと自体が難しい。応用だけをやると大きな問題が生じると思う」と語り、実利や目先の成果を追求する現在の日本の風潮に警告を発した。
 安倍総理は、4年前のOECD閣僚理事会の基調演説で「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う」と世界に向かって発言してしまった。つまり、基礎研究よりもすぐに金になるような教育改革を進めるというのだ。これで、すっかり、日本のノーベル科学賞の受賞者たちから反感を買ってしまった。基礎研究というのはいつ実を結ぶかは、わからないうえ、結果も出せないかもしれない。そこに多額の金を注ぎ込むのは無意味だという主旨の、総理の発言に反発したのだ。安倍総理は、その発言の前に「小保方晴子STAP細胞事件」があってそうした思いが強くなっていったのかもしれない。しかし、無尽蔵に予算を割くことはできないだろうが、すでにトップクラスの先進国になっている日本の使命として、基礎研究に人材育成や予算を十分に充てることは世界の中の日本の役割として、絶対不可欠なはずだ。目先の経済優先政策だけでは、いずれ日本はノーベル賞でも中国に抜かれ、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。
 

米朝首脳会談
2018/06/12(火)
 6月12日、シンガポールのリゾートホテルでアメリカのトランプ大統領と北朝鮮金正恩委員長が史上初めての首脳会談を行った。北朝鮮の核放棄と経済制裁解除をめぐって、両首脳の直接の交渉により、何かを具体的に決定するはずだった。しかし、合意文書の4項目は
 1.米朝関係の正常化
 2.朝鮮半島の平和体制保障
 3.朝鮮半島の完全な非核化
 4.朝鮮戦争の遺骨送還
という、何だか拍子抜けの内容であり、4つ目の遺骨送還だけが妙に具体的に現実的な項目だった。つまり、「朝鮮半島の完全な非核化」という南北首脳会談での文言を繰り返したにすぎず、CVID(完全Completeかつ検証可能Verifiableで不可逆的なIrreversible解体Dismantlement)という表現は全く盛り込まれていない。結局は、「二人が会った」という以外の収穫はなかった、ということになるだろう。これで今後両国は何を始めようというのか。こんなパフォーマンスだけの政治ショーでノーベル平和賞を与えるなど、いくら平和を牽引する選考委員会でも唾棄すべきシロモノと映るだろう。トランプは日本の拉致問題も提起したというが、言ったよ、という程度しか思われず、結局は日本が一から直接交渉するしかない。北朝鮮の核放棄は表面的で儀式的なものに終わるのがますます見えてきた。アメリカは北朝鮮の核保有を黙認するしかなくなる。国連決議の経済制裁は中国やロシア、韓国が率先して破っていくことであろう。
 日本は拉致被害者の解放を第一義に考えているため、ギリギリまで制裁は解除できず、極東で孤立していき、アメリカとの同盟関係も薄らいでいくことになるかもしれない。今後は北朝鮮が中国とアメリカのどちらに重点を置いて付き合っていくかが焦点となる。中国の庇護を受け、かつての属国のような立場に甘んじるか、アメリカや韓国と経済関係を強化してシンガポールのように先進的で独立した独裁国家になるかのどちらかだ。北朝鮮はアメリカや中国を利用したいが、彼らの属国扱いにはされたくないはずだ。経済力を強化し、核兵器を温存した高度の軍事国家として、独自の国家像を目指すのではないか。何しろ若い金正恩にはまだまだ時間がある。他国の指導者は交代、あるいは失脚していき、自分が最後まで生きているという確信があるはずだ。金正恩の野望にトランプはたやすく踊らされてしまった、というのが今回の「歴史的会談」の真相だと思う。もっともトランプも今回の合意文書などいつでも破棄するかもしれないのだが・・
 

南北首脳会談
2018/04/29(日)
 4月27日、板門店の韓国側施設で北朝鮮金正恩委員長と韓国の文在寅大統領が首脳同士として11年ぶりに会談を行った。北側のトップが韓国に足を踏み入れるのは初めてのことだ。すでにさまざまな評価がなされており、概ね、2つに分かれる。ひとつは、北朝鮮が「完全な非核化」の意思を示したことを前進と評価していること。もう一方は、具体的な内容には触れていず、米朝首脳会談を待たないと何とも言えない、あるいは、以前と同じことを言っているだけでどうせウソだろう、との冷やかな反応だ。韓国側は大掛かりな演出を施し、「歴史的会談」に仕立てることに全力を注いだ。これは、北朝鮮に冬季五輪のお礼として、融和路線に前のめりの文在寅大統領の「南北融和」「南北統一への道」の花火を打ち上げた税金の無駄遣いの茶番劇だったようだ。やはり文在寅大統領は、御しやすいと北側に踊らされてしまっている、というのが日本的な見解だろう。
 北朝鮮が核を完全に廃棄するのか、しかも短期間に、という課題は達成されるかだが、極めて不可能に近い。金正恩の立場になって考えれば容易であろう。国民の多くを飢えさせ、自分に反対する側近を残虐な方法で殺し、兄まで暗殺した。核兵器開発にあらゆる犠牲を払って、ようやく手にしたのだ。それを易々と文在寅やトランプと会ったくらいで放棄するとは考えられない。アメリカに体制を破壊され、殺されたリビアやイラクの惨状の記憶を消すことはできない。北朝鮮の重要な兵器や施設、ノウハウは別の場所に隠蔽することが完了したはずだ。金一族政権の存続を第一義と考えている以上は、核放棄はありえない。北朝鮮の国民の命や生活を一番に考えていれば、自分の命を差し出すことぐらい厭わないはずだ。これだけ固執するのは、生き延びたいだけの、自己保身でしかない。
 世界の指導者が、大なり小なり、自己保身のためや手柄を世界や自国にアピールしたいがために、多くの国民の命や生活を犠牲にしているのが、現在の世界のありようだ。北朝鮮を非難するのは容易いが、自分の国がどれほど褒められる国なのかも、この際よく考えてみたいものだ。
 

平昌五輪開幕
2018/02/10(土)
 2月9日、韓国平昌(ピョンチャン)で開幕した冬季五輪の主役は、各国の選手たちでもなければ、主催国の韓国でもなかった。いうまでもなく、北朝鮮が最大の主役であり、メインのゲストであることは世界の誰の目にも明らかなところだ。ホストのはずの文在寅(ムンジェイン)韓国大統領の影は薄く、北朝鮮というしたたかな独裁国家を引き立てるための、猿回しのサルに徹した感がある。左派勢力の大統領として、北朝鮮との融和政策を前面に押し出すあまり、日米韓の対北朝鮮政策連携に揺るぎが生じており、今回の平昌五輪での北朝鮮への厚遇は決定的なものになったようだ。女子アイスホッケーの南北合同チームやいわゆる「美女応援団」、北朝鮮ナンバー2の金永南(キムヨンナム)や金正恩(キムジョンウン)の妹金与正(キムヨジョン)の受け入れ、さらに、それらに伴う陸路、海路、空路を確保させ、超VIP待遇となったわけだ。平壌(ピョンヤン)五輪と揶揄されてもしかたのない状況が生じている。開会式に招待された日本の安倍首相やアメリカのペンス副大統領は刺身のツマ扱いになったと感じ、不快感と警戒感が高まったことだろう。北朝鮮と韓国は、中国とアメリカのパワーバランスを保つために必要な存在であり、どちらかへ実際に統一されることは事実上不可能だ。もし、統一されることがあれば、北朝鮮を巡って米中が戦争をして得られた結果の解答ということになるのだろう。平和的な統一ということは、まず考えられない。しかし、文在寅大統領は金正恩からの訪朝要請の親書に浮足立ち、そんな儚い夢を本気で抱いているのかもしれない。いずれにしても朝鮮半島は、米中ロと日本に翻弄され続ける運命にある地域なのだろう。
 そんな中にあって北朝鮮は、核開発に対する国連安保理決議による国際的制裁にもかかわらず、中国やロシアから密かに援助を受け、また、仮想通貨の強奪などサイバー攻撃により利益を得ようとしている。そのうえで融和政策により成果を上げたい文在寅大統領を微笑外交で蠱惑している。日本のテレビ局もそうだが、「美女応援団」に魅了された韓国の男たちが哀れだ。北朝鮮は着実にポイントを稼ぎ、生き残りを図り、アメリカに北朝鮮の核保有の容認または黙認させることになる可能性が高くなってきている。
 今回の平昌五輪は、完全なる政治的なショーの場となってしまった。しかし、せめて日本選手が登場する場面では、純粋にスポーツの祭典として応援したいものだ。
 

仮想通貨
2018/01/29(月)
 昨年後半あたりから、仮想通貨の取引所のテレビコマーシャルが急激に増えてきた。ビットコインが最も知られているが、1000種類以上の仮想通貨が世の中にあるそうだ。私のような疑り深い人間は、イメージできない世界は利用したいとは思わない。しかし、出川哲朗のCMで一般に知られるようになった取引所「コインチェック」が仮想通貨のNEM580億円相当を不正アクセスにより流出させた事件が公表されたお陰で、ニュースでもわかりやすく説明されるようになった。
 円やドルといった国が所管する日本銀行のような中央銀行が発行する法定通貨とは異なり、仮想通貨にはその価値を保証する機関がない。決済や送金にあたっては、インターネット上のブロックチェーンと呼ばれるコンピュータ・システム網により、不正取引の監視ができる、とされている。ブロックチェーンがいまひとつ理解できないため、なぜそれで安全で不正防止などのチェック管理が可能なのかがわからない。
 また、仮想通貨本来の利便性よりも通貨の上昇を狙った投機目的で購入する場合が多く、為替や株の取引きと同じ感覚のようだ。昨年には、ビットコインで1通貨約12万円だったものが240万円近くまで高騰することがあり、大いに注目された。しかし、変動幅が大きく、通貨としての安定性に欠けるため、まだ、浸透するには紆余曲折があるのだろう。
 今回のコインチェックの不正流出は、会社側がオフラインで処理すべき仮想通貨の管理をオンラインのまま行っていたため、不正アクセスされたとのことだ。このあたりも理解不能な部分で、仮にオンラインであっても不正アクセスを許すシステムなど問題外だろう。これで仮想通貨が下火になっていくかどうかは、違うようだ。メガバンクや大手企業が保証機関となる新たな仮想通貨の動きがあるようで、事態は加速度を増して進化しているようだ。世界からすれば貨幣価値の安定しない韓国や中国では自国通貨による電子マネーの決済が主になっているが、自国の経済を混乱させるかもしれない仮想通貨は排除されつつある。法定通貨が安定していない国では、仮想通貨は危険なシロモノなのだろう。まだまだ電子マネーはおろか現金至上主義的な日本が仮想通貨大国になるかどうか、今試されているということだ。
 ただし、真の量子コンピュータが登場した場合、すべての暗号が瞬時に解読されるため、ネットワーク上のセキュリティーが崩壊するとも言われている。そうすれば、仮想通貨も電子マネーも通用しなくなる。現物通貨が復活することになるかもしれない。日本の紙幣印刷技術と管理の仕方をしっかりと残しておくことも必要なことかもしれない。まだまだ課題が多くありそうだ。

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